飛騨高山の伝統工芸「春慶塗」。
その歴史の始まりを象徴する一品が、この蛤型のお盆です。
慶長12年(1607年)、当時の高山城主・金森重頼の時代。
大工であった高橋喜左衛門が、椹(さわら)の木で作った蛤形のお盆を、重頼の長兄である**金森重近(宗和)**に献上しました。
その形と使い心地を大変気に入った重近が、塗師・成田三右衛門に命じて漆を施させた──
それが春慶塗の始まりと伝えられています。
やわらかな曲線を描く蛤型は、古くから縁起の良い形とされ、
調和・包容・末広がりを意味する、伝統ある意匠。
直線をほとんど用いず、手仕事だからこそ生まれる自然な丸みが、手に取ったときにしっとりと馴染みます。
春慶塗最大の魅力である、木地を活かした透けるような漆の表情。
このお盆では特にそれが際立ち、椹の木目と飴色の艶が美しく重なり合います。
使い込むほどに艶が増し、色合いが深まっていく様子は、まさに暮らしとともに育つ器。
雲を思わせる意匠は主張しすぎず、しかし確かな存在感を持ち、
和菓子、茶器、酒器、膳として──
何をのせても、場の格を自然に引き上げてくれる一枚です。
この蛤型のお盆から、春慶塗は始まりました。
四百年以上の時を経てもなお、形が変わらず受け継がれてきた理由は、
美しさと実用性が、最初から完成されていたから。
伝統とは、古いことではなく、
今も選ばれ、使われ続けていること。
春慶塗の原点を、日々の暮らしの中で味わっていただける、特別なお盆です。
※これは檜で作られています
サイズ:たて240mm×よこ290mm×高さ15mm



